2009年5月15日金曜日

君だけの「風林火山」

 「疾(はや)きこと風の如く、徐(しず)かなること林の如く、侵(おか)し掠(かす)めること火の如く、動かざること山の如し」(孫子)

 昔の人の生きる知恵はすごい。冒頭の言葉は、武田信玄が好んで用いた有名な一節だが、先人たちは、これに限らず自分の拠り所を短い言葉に濃縮して、それを肌身離さずそばに置くことによって、自分の羅針盤としていた。それが座右の銘だ。

 歴史にもまれた古事、ことわざの中には素晴らしいものが多い。例えば、学びに関することだけでも山のようにある。

「学びて時にこれを習う。また説(よろこば)しからずや」(論語)
「少年老い易く学成り難し。一寸の光陰軽んずべからず」(作者不詳)
「少にして学べば、壮にして為すあり。壮にして学べば、老いて衰えず。老いて学べば、死して朽ちず」(佐藤一斎)

 偉人の言葉にも私たちの拠り所となる言葉が多い。

「俺は、昨日の俺ならず」(坂本龍馬)
「面白き ことも無き世を 面白く すみなすことは心なりけり」(高杉晋作)
「どんなに悔いても過去は変わらない。どれほど心配したところで未来もどうなるものでもない。いま、現在に最善を尽くすことである」(松下幸之助)

詩や映画や本、そして漫画にだって座右の銘になりうるものが沢山ある。

「唇には歌を、心には太陽を」(ツェーザル・フライシュレン)
「You’ll never find rainbows if you're looking down.」(チャーリーチャップリン「サーカス」)
「これでいいのだ」(バカボンのパパ、赤塚不二夫「天才バカボン」)

格言と呼ばれるものは、人間の心理を端的に表しているからこそ支持されている。インターネットがなかった時代、相場師たちの拠り所の一つは「相場格言」と呼ばれるものだった。この相場格言の中にも生き方に通じ、座右の銘にできそうな言葉が豊富にある。

「『もう』は『まだ』なり。『まだ』は『もう』なり」
「人のゆく裏に道あり花の山」
「夜明け前が一番暗い」

 座右の銘、は別に小難しい言葉である必要はない。身近なところでは、日本のポップスだって新旧問わず名言の宝庫だ。

「信じられぬと嘆くよりも 人を信じて傷つく方がいい」(海援隊)
「負けないこと、投げ出さないこと、逃げ出さないこと、信じ抜くこと。ダメになりそうな時、それが一番大事」(大事マンブラザーズバンド)
「負けたら終わりじゃなくて やめたら終わりなんだよね」(SEAMO)

もっと言うと、自分で作ったって良い。自分の美学、哲学を端的に表したものであればいいのだから。敬愛する前職の同僚の座右の銘を紹介しよう。これを聞いた時には思わずうなった。それ以来、私自身の座右の銘の一つでもある。

 「苦しい時には、高田純次を思い出せ」

 まさに至言である。

 君だけの座右の銘を持とう。

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