フィギュアスケートのキムヨナ選手は「浅田真央選手がいなかったら今の自分はない」と色々なところで語っている。彼女たちは、お互いがお互いをライバルと認め、ここ数年のフィギュア界を引っ張り、年を重ねるごとにその芸術性、技術、を高めている。キムヨナ選手と浅田真央選手は最近の好例だが、良きライバルの存在は、モチベーションを高め、時には折れそうな心を奮い立たせてくれる。
女子柔道の谷亮子選手もまた、素晴らしいライバルを持ち、そのライバルの存在によって自らを高め続けてきた人だ。谷亮子選手は中学2年で初めて出場した世界選手権で銀メダルを獲得して以来、オリンピックに5回出場(全てでメダル獲得)、世界選手権は6連覇、そして2006年まで毎年開催されていた福岡国際女子柔道選手権では11連覇という前人未到の記録を達成した。結婚、出産を経た今なお、20年近くにわたって世界のトップ選手の一人として活躍を続ける人である。一つの目標を達成した後、どんな一流のアスリートでも一定のクールダウン期間をとるものである。五輪平泳ぎで2種目を連覇した北島康介選手や、柔道65キロ以下級で五輪3連覇をした野村忠宏選手でさえ、五輪が終わると次の五輪を目指すかどうかは白紙、と言って1年位休養をとってきた。しかし、谷選手はいつでも次の目標を即座に答える。金メダルを取ったその日に次の目標を「オリンピックの連覇」「世界選手権の連覇」と答えていた。
「多くの人は、世界の頂点に登りつめたら、ものすごい達成感のもとに容易に次の目標など見いだせないもの。実際、次の目標が見えずに、競技を引退する選手も多い。谷選手はなぜモチベーションを切らさずに、すぐに次の目標を設定できるのか」あるインタビューで、記者が聞いた。その時の谷選手の答えがこうだった。
「私は、初めて畳にあがった小学校1年生の私にまだ勝てていない。肉体も技術も、その頃とは比べるまでもなく強くなっただろう。でも、『柔道と向き合う気持ち』は、まだその時を越えられていない。初めて試合をした時のひたむきな気持ち、無心さ、そして体の底から湧き上がった『楽しい』という感覚。小学校1年生の私を越えられた時、私は喜んで畳を降りる」
「初心の自分」はもっとも手ごわいライバルである。一方で、行き詰まりを感じている時、自分を救ってくれるのもまた、「初心の自分」なのかもしれない。
君にも好敵手はいるだろうか。良き好敵手を持とう。
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